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図書室1


++ ガトゥール ++++++++


 ガトゥールは決心した。


 「ルーナ」に婚姻を申し込むのだ。

 唐突なようだが熟慮の上である。

 あんなに麗しい「ルーナ」がこの先もしばらく独り身と言うことはあり得ないのだ。


 魔法の国サラナームは実力主義の国。

 ガトゥールは土魔術の優秀な使い手だ。

 ガトゥールの魔術は正確さとスピードの両立が評価されており、年々その精度も上がっている。


 父が先代君主が巻き込まれた事故で先代君主を守って他界しているという、忠義の厚い家にガトゥールは生まれている。

 そして魔術の実力と忠誠心の高さに加え、現君主の護衛を任されているのはガトゥールの実は温厚な人柄が評価されてのことなのだ。


 トーカル公国の公女殿下は雲の上の存在だ。

 だが現在のサラナームでは重視されないとは言え、ガトゥールの家はこの国にも爵位があった時代の古い血筋に連なる、いわゆる名門である。

 何より『雷帝』と呼ばれる妹カディラと「ルーナ」は不思議な縁で結ばれているようだ。

 これを活かさぬ手はない。

 妹も喜ぶはずだ。




++ エレン ++++++++


 エレンは決心した。


 「ルーナ」に想いを伝えるのだ。

 唐突なようだが、天空祭りの夜、彼女がサラナームの民族衣装を着た姿を見たときに決めた。

 遅れて行ったので、ほんの少しの時間だけしか一緒に居られなかったのが本当に残念だ。

 あんなに麗しい「ルーナ」がこの先もしばらく誰かのものにならないと言うことはあり得ないのだ。


 魔法の国サラナームは実力主義の国。

 エレンは水魔術では並ぶ者のいない使い手だ。

 現在の君主と同時期に君主候補だったこともあり、実力は折り紙つきだ。


 以前、密かに慕っていた女性を横から攫われてしまったことがある。

 あんな思いはもうしたくない。


 彼女とは婚約していた。

 まだ婚約が解消される前、先代君主から尋ねられた。

 次期君主になる気はあるかと。

 婚約者は先代君主の娘だった。

 どう答えるべきか迷った挙句、かなり日数が経ってから、自分は君主の器ではないと答えた。


 もともとエレンが赤ん坊のときに遠戚同士で結んだ婚約関係だったが、どうせ想い合う仲でもないのだからと、その後すぐに婚約は解消された。


 エレンは先代君主の問いに対する答え方を間違ったのだ。

 仕事面は有能なのに、自分のことになると途端に煮え切らないエレンだ。


 エレンは面倒臭い性格の男なのだ。

 密かに想う必要のない婚約者と言う立場だったのに彼女を慕っていたことが言えなかった。

 でも本当はずっと好きだったのだ。

 気を引きたくて、いろんな女性と仲の良いフリをしてみたりした。


 君主の後継者にならないという答えにしても、元婚約者に負担をかけたくないとの考えからだった。

 考えた末の答えだったが考え過ぎだ。

 君主候補の方はさっさと身を引けば良かったし、元婚約者にも正直な気持ちを早くに伝えるべきだった。


 欲しいものができたら面倒臭く考えずに行動すべきなのだ。

 エレンが過去の失敗から学んだことだ。


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