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カディラのドキドキ


 カディラは一人で輿に乗って家に帰る途中だ。

 ガトゥールは輿ではなく山羊の背に跨ってカディラの乗る山羊に随行している。


「ルーナ様に抱きしめてもらえた! んー!!」


 本当に叶うなんて思っていなかった。

 とても光栄なことだ。

 もう胸がいっぱいになる。

 でも……なんか違うことも感じた、気がする。


 宮殿のときは我を忘れていたのであまり意識しなかった。

 でも今日は……なんというか、抱きしめられたときのドキドキがそれはもう凄かったのだ。

 しかも「ルーナ」の鼓動も聴こえたように思う。

 気のせいかもしれないが「ルーナ」の鼓動はカディラの比では無いほど速かったのではないだろうか。

 どくん、どくん、どくん、どくん。

 あれはどちらの心臓の音だったのか。


 今日も「ルーナ」はスズランのような清廉な香りがした。

 母の抱擁とは違うが落ち着く香りのはずだ。なのに。

 「ルーナ」の大きな手で抱擁されたカディラは、安心感とはまた違う、なんだか甘く震えるような感情を湧かせて悶えてしまう。

 こんな気持ちになるのは初めてなのだが「ルーナ」が美し過ぎるから感動も大きいのだろうか。


 それにしても、あんなにあんなにドキドキしたのにカディラは『雷帝』にならなかった。

 カディラは「ルーナ」がいれば大丈夫なのだと確信した。

 そして呟いた。


「ルーナ様に頼っているだけではだめだわ。

 ルーナ様に認めてもらえるように、私も頑張りたい」



 その夜、カディラは夢を見た。


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