ルキウスは気が付きます
ルキシャもメリアも大山羊の輿に乗った移動には随分慣れた。
夏という季節も終わったようだ。
それなりの時間をここサラナームで過ごしたのだ。
ルキシャはこれまでキーズに本当のことを話すつもりでいたが、機会が得られないまま時間だけが経って、ますます言い出しにくい状態だ。
いっそ皆の前で宣言してしまう……は、やはりまずいだろう。
国交を開いたばかりで、これから友好関係を築こうと言う両国の関係に水を差してしまう行為だ。
ここまで来たらキーズに明かして執り成してもらうほか無いと思う。のだが。
こうも問題が解決しないのは自分の行いの報いなのだろう。
様々な思いが心の中でうごめく。
今のまま「ルーナ」のふりを続けることには、そのうち限界が来るだろう。
今後「ルーナ」の役割を姉のルーナに頼むことになるのだろうか。
それも上手く行くだろうか?
誤魔化すほどにサラナームの友好的な配慮を裏切ることになるのではないのか?
そもそも姉の瞳にも同じ効果はあるのか?
そして……ルキシャはもう二度とカディラに会えなくなるのか?
…………それとも、それとも、この偽りを継続するか?
あの薬を飲めば……。
「ルキシャ、覚悟の上で今回の計略を考えたんでしょっ?
それにしても、今後、身長とか伸びちゃったら……困るね。
いっそ、あの薬を飲むとか……は、賛成したくないけどっ」
「飲んだら……男じゃなくなってしまう…………」
「女になるのは嫌になったの? 前は別にどっちでも良いって言ってたじゃない。
いや、滅茶苦茶痛みが出るんでしょ?
それは飲まないで欲しいけどっ。
このままだと、どうしても、ってときが来るかも……しれないね」
メリアが苦しそうに言った。
そしてルキウスははっきりと気が付いた。
男でなくなることに対して今更自分の中で抵抗感があることに。
以前はそんなこと感じていなかった。
幼かったとは言え、本気で女性になることを考えて方法を探していたのだ。
先ほどの、カディラを抱きしめたときの感触がよみがえる。
心臓や肺の辺りがぶわっと膨らむ。
カディラの黒く輝く瞳が今日はベール越しに在ってもどかしかった。
カディラの体の形が残像になって触れていた腕の内側を刺激する。
鼓動が再びうるさくなる。
カディラのことを考えると、ルキウスは最近ずっとそうだ。
( そうか……。「ルーナ」のままじゃ嫌なんだ。俺は男のルキウスをカディラに知って欲しいんだ )
気が付いてしまった。さてどうする。




