ルキシャは雷帝の仕事場に来ています3
カディラはサラナームの陰の功労者である。
なのに、これまで楽しいことから遠ざかっていた。
そのカディラの願いだ。
「ルーナ」は尊き御身とは言え、『奇跡の動力石』を作るカディラの功績を想えば実現可能な願いではないのか?
観劇の演者がその支持者をサービスとして抱きしめることだってあるのだ。
そもそも女性同士。問題無いのでは?
そういう空気が起こる。
ルキシャとキーズを除いて。
( それは過剰が過ぎる! )
「ル、ルーナ殿下、む、無理には……」
キーズが言いかけたが動揺で声が小さかった。
「なんと!カディラは本当にルーナ殿下をお慕いしているのだな。
ルーナ殿下、どうかカディラの願いを聞いてやって頂けませんか?」
仕事だけは有能なエレンが有能故に余計なことを言った。
が、エレンは悪くない。
エレンだってカディラをずっと不憫に思っていたのだ。
ガトゥールは何も言わないが期待を寄せて目をキラキラとさせている。
ガトゥールの母はカディラの気持ちを落ち着かせるために抱きしめていた。
カディラのこの願いは母への思慕のような気持ちなのだろう、とガトゥールは泣きそうになっていた。
( ……ダメだろ?……どうしたら……いやでも…… )
ルキシャは( 今はルキシャ、今は公女、今はルキシャ、今は公女 )と呪文を唱えだした。
なんとかこの場を凌げるかもしれない。
「わ、わたくし、構いませんわ」
ルキシャはカディラに近付く。
( 今はルキシャ、今は公女、今はルキシャ、今は公女、今はルキシャ? )
( ん?じゃなくて今は「ルーナ」か? )
いかーん!混乱してきた。
でももうカディラは既に目の前だ。
「………カディラっ」
勢い余って、カディラを強くギューッと抱きしめてしまった。
抱きしめ過ぎた。




