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意地っ張りのお妃様


 アーリンは魔術の国、サラナームの君主の妃だ。

 そして前の君主の娘でもある。


 先代君主はキーズを後継者に指名する際に、キーズに自分の娘を娶る気があるかと問うた。

 キーズはそれに即答で諾して、そして後継者となる指名を受けた。

 つまりキーズは君主になるためにアーリンを妻とする条件を呑んだのだ。


 アーリンはキーズより七歳年下で、君主の娘として育ったからか我儘で傲慢だと評判だった。

 実際そういう面もあるとアーリンは自覚している。

 自分は意地っ張りだし、我儘と言えなくもない。


 アーリンがキーズと婚姻を結ぶ前、アーリンには小さな頃からの婚約者がいた。

 三歳年下だったその婚約者は異性にモテるタイプの男性で、アーリンの方が年上なのにアーリンをいつも適当にあしらっていた。


 アーリンと婚約者には定期的な婚約者同士の交流が用意されたが、大抵いつのまにか婚約者は消えていて、なんならアーリンの侍女と木陰で仲良くいちゃついているのだ。

 本当はそういうことが気に入らなかった。

 でも、年上の自分が怒って感情を露わにするのが悔しくて、気にしないふりをしていた。

 アーリンはいつもそうだ。意地を張ってしまう。


 キーズは君主になるため、まあまあ年下で話も合わないだろう上に気位ばかり高くて可愛げのない女を妻にしたのだ。

 アーリンは最初、浮気なんかもされるんだろうと予想していた。

 しかし予想は当たらなかった。


 キーズは女好きなようだ。

 綺麗な女性が通ると分かりやすく目で追っているし、大して知り合いでもない女性との、どうでもいいような会話も好む。


 しかし、アーリンのことをないがしろにしたことはない。

 それどころか二人きりになると、結構熱烈に愛をささやいてくれてしまう。

 アーリンもすっかりキーズに絆されて、キーズがいない人生など考えられないくらいだ。

 キーズは必ずアーリンのところに帰って来る。

 いつしかアーリンはキーズの誠意を信じるようになった。


 今、アーリンの目の前に、トーカル公国からやってきた傾国の美姫「ルーナ」公女が座っている。

 一緒にお茶を飲んでいるのだ。

 キーズは居ない。


 先日の天空祭りの日、アーリンは「ルーナ」の案内役を侍従や護衛から要請されたが、結局首を縦に振らず、高官たちに任せた。

 急に言われたせいもあるが我儘を通してしまった。

 キーズはそんなアーリンを咎めたりはしなかったが、「自分の目で確かめたらいい」と半ば強制的に、この場を用意したのだ。


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