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天空祭りの日の昼間1


「ルーナ公女殿下、キーズ様は打合せが長引いており、本日の天空祭りのご案内は出来なくなりました。

 エレン侍従長も同じ会議で遅れております。

 先に公女殿下をご案内せよとの指示を受けましたので、不肖このガトゥールがルーナ公女殿下にお供いたします」


 今日はサラナームが一年で一番賑わう祭りの日だ。

 ルキシャは祭りのことはまったく知らなかったのだが、サラナームでは夏の暑さが最も強まる頃に空の星に祈りを捧げる祭りを行うのだそうだ。

 祭りは比較的空が晴れて星が見えやすい日が選ばれる。

 サラナームの人々は星を眺めて短い夏を祝うのだ。


 「ルーナ」になりすましたままのルキシャは、未だ君主のキーズに自分の正体を明かせずにいる。

 そして今日もその機会は得られないようだ。

 気持ちが沈むが今日は祭りの日だ。

 国賓の行事として夕刻から始まる祭りにも臨席する。

 自分の都合で落ち込んでばかりはいられない。


 本日、キーズは他国の要人と会談している。

 何も祭りの日に、とガトゥールは思うが、エレン侍従長の差配らしい。

 今回トーカル公国に『奇跡の動力石』で便宜を図るにあたり、他国との調整が必要だった。


 『奇跡の動力石』は他国も欲しがっている。

 これまでサラナームと国交も無かったトーカル公国に『奇跡の動力石』を渡すなら我が国の分も増やせと、横やりを入れてくる国家もある。

 『奇跡の動力石』の輸送には他国の商人も絡んでくる。

 キーズは今それに追われている。

 ルキシャも分かっているので文句を言う筋合いには無い。


 本日ルキシャは煌めく小さな石を多数縫い付けた薄いベールを被っている。

 そしてサラナームの民族衣装のドレスを着ている。

 ドレスはエレンが見立てたらしい。


 トーカル公国の女性の装束同様にサラナームのドレスもルキシャに都合よくできていたので助かった。

 体の線が出にくいので隠したいところが隠せる。

 ルキシャのドレスは、濃紺の生地に金と銀の刺繍で星が彩る大河が流麗に描かれている。


 さっき会ったばかりのカディラがこのドレスを纏ったらとてもよく似合いそうだ、とルキシャは思う。

 彼女の夜空を想わせる漆黒の髪がこのドレスにふわりと落ちる瞬間が目に浮かぶ。

 それだけで体の内側に火が灯るような感覚が起こってルキシャは胸を押さえた。

 実は、カディラは数刻前「ルーナ」と一緒に居たのだ。


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