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ルキシャは打ち明けます


「キーズ様、わたくしは何かお役に立てるのでしょうか?」

「……ほう。ルーナ殿下はお美しいだけでなく、大変明澄でもあられる。素晴らしい。

 この流れで、サラナーム側が取引きを持ち掛けると気付かれたのですね?」


「キーズ様。もう正直に申します。

 我が公国は、現在、未曽有の危機に瀕しております。

 わたくしがサラナームに参りましたのは、その危機から国を救うためです。

 ……ですから、わたくしが、公国が、何かサラナームのお役に立てることがあれば、公国側も取引きを願い出られるのでは?、とずっと考えておりました」


 ルキシャ扮する「ルーナ」は今のままではトーカル公国が湖の底に沈んでしまうという話を包み隠さずキーズに伝えた。

 まだ公国の民もそこまで事態が深刻だとは知らない。

 他国にこのことが知られるのは公国の信用問題にもなる。


 しかしルキシャはサラナーム君主キーズと『雷帝』に賭けてみることにした。

 それから多分だが、トーカル公国の碧の鉱石には宝飾品以外の利用価値がある気がする。

 そこにも何か活路があるはずだ。


「……なるほど。そうでしたか。だから、こんな無茶な……」


 息を吐きながらキーズが言いかけたことにルキシャは下を向いた。

 いきなりやって来て「伴侶にしてくれ」などと息巻いたのだ。

 無茶と言うほかないだろう。


 しかしキーズが「無茶」と言ったのは、この「ルーナ」のとんでもない正体に関してなのだが。




 昨日の騒ぎのとき、気が付いたのはキーズだけかもしれない。

 広間から退室する直前、振り返ると「ルーナ」が一瞬視界に入った。

 そのとき「彼女」は無意識にだろう、体術の受け身の体勢をとった。

 ドレスの裾が動きでめくれた。

 キーズは更に動揺してそのまま侍従達に連れて行かれたが何呼吸か置いて気が付いた。


「あれは女性の骨格ではなかった。

 そういう目で見ると、確かに『ルーナ公女』から漂う違和感の理由が分かる。

 知らぬ者には、その違和感すら『ルーナ公女』の神話的な魅力に見えるだろうが」


 一方、キーズの後ろではエレンが胸を打たれていた。

 「ルーナ」は公国を救うためにサラナームにやって来たのだ。

 「ルーナ」はやはり気高く強く美しい女性だ。


 ガトゥールは、ここの護衛を外れていて不在だった。

 もしガトゥールもいたら、単身で真摯に祖国の窮状を訴える「ルーナ」を見て感涙にむせび泣いていたに違いない。


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