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カディラとガトゥール1


 ガトゥールは宮殿から少し離れた一軒家に妹と二人住んでいる。

 君主付きの護衛は宮殿内に宿舎を用意されているがガトゥールは上司の了承を得てこの家から宮殿に通っている。妹のためだ。


 今夜ガトゥールは妹が心配だったので護衛の仕事を代わってもらった。

 今は自宅にいる。

 妹はもう寝た。

 今日は「発作」も起きたのだ。

 疲れたことは間違いないだろう。




 魔術の国サラナームでは多くの国民が自然の力を借りた魔術を使える。

 ほとんどは、風・火・土・水に分類される魔力を持っていて、それを利用して魔術を行使するのだ。

 ただごく稀に、この分類に当てはまらない魔力を持った者が現れる。

 ガトゥールの妹、カディラがそうだった。


 カディラは生まれてすぐにその魔力を発現させた。

 魔術の知識など無い新生児のカディラは、その後数年間、魔力が使えなくなる程の力を一気に出した。

 そしてその魔力は大きな雷雲を呼んだのだ。


 カディラの母は実家でカディラの出産にあたっていた。

 無事に生まれた赤ん坊を自分の手に抱く前に赤ん坊からバチバチと光が弾け出した。

 赤ん坊は大きな泣き声を上げている。

 昼だと言うのに、窓から見える空は黒く重たい雲に覆われて暗い。


( 赤ちゃんを! 抱いてあげなくては! )


 産婆も無事に取り上げた赤ん坊が発光しだしてからは触れることができないようだ。

 カディラの母は動けないまま手を伸ばしたが、……届かない。

 そのとき、空間全体が一瞬で真っ白の閃光に包まれた。

 その後のことを……母は覚えていない。


 カディラの魔力は雷を呼ぶものだった。

 歴史書に同じような赤子の記述があり、誕生と同時に自分で呼んだ雷のせいで死んでしまったと書かれていた。

 この赤ん坊は落雷を招いた際に多くの人を巻き込んだこともあり、歴史書で残酷雷帝と名付けられていた。


 カディラは奇跡的に生き残った。

 その後、ものごころが付くまでの魔力も枯渇していたので泣いても雷雲を呼ぶようなことは無かった。


 母も産婆も死ぬことを免れたが、母は光を失った。

 母の実家は燃えて無くなった。

 凄まじい落雷の跡が地面を抉っていた。

 歴史書の記述と異なり誰も亡くならなかったことを皆が幸運と捉えた。

 カディラ以外は。

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