ルキシャは反省します そういえば……
『雷帝』はその名の通り雷をもたらすらしい。
トーカル公国親善大使の「ルーナ」公女とサラナーム君主の謁見が宮殿崩壊という危機に晒されたあと、とりあえず皆疲れ切ってしまった。
急ごしらえで用意した晩餐会も延期になった。
今、ルキシャは客間にいる。
ルキシャが与えられた客間は国賓用に誂えられた部屋だ。
天井が高い部屋には絢爛というより品が良く手の込んだ調度とここが異国なのだと感じさせる刺繍の入ったタペストリーなどが並び、サラナームの国力を存分に感じさせる空間になっている。
ルキシャはそこで一人、ベッドに腰かけている。
そういえばトーカル公国からの一行を迎えに来てくれた侍従長が壁に掛けられた刺繍によく似たローブを着ていたな、とルキシャは思い出す。
そして、
「まずは謝ろう……」
何度もその考えに戻ってきている。
体はもう疲れ切っているのに頭が冴えて休めない。
ルキシャの計略は大失敗に終わった。しかし。
そう言えば、カディラも、カディラの兄も、碧の石と碧の瞳のことを話していたと思う。
もしかするとそこに何かトーカル公国が生き延びる術があるのではないか?
ルキシャは思い込みで大きな勘違いをしていた。
今後トーカル公国は笑い者になるのかもしれない。
しかし現時点ではまだ、ルキシャの「偽証」が明らかになったわけではない。
なんとか公国を救う手立てを得られないか。
ようやくウツラウツラしながらルキシャはふと思う。
「金の瞳、なんて凄烈で……黒い…瞳……もう一度……」
どうやら眠れそうだ。
そういば、何かを忘れている気がしてきた。
壁に飾られた刺繍が目に入る、が……限界だった。
ルキシャは意識を手放した。
その頃、皆が疲労困憊の体を休ませていた頃、一人なぜか道端で寝ていた「ルーナ」の護衛騎士、アーネストが体を起こした。
この男、検問所の手前からずっと寝ていたようなものだ。
一人だけ元気が有り余っている。
アーネストが目を覚ましたとき、なぜかは分からないがアーネストの上半身は布に包まれていた。
布は見たこともない刺繍が施されている立派なものだった。
何かに括りつけられていたのかもしれない。
千切れた縄が体を取り巻いていた。
そして他にもいくつか荷物が落ちていて、その上に寝ていた。
それからこれもなぜだか体中がベトベトしている。
特に体に怪我などもないようだ。空腹も感じる。
空はところどころ雲で覆われているが雲間から月も見える。
辺りは草木がほとんどなく岩だらけだが人が住んでいる場所ではあるようだ。
少し離れたところに民家のような明かりが見える。
とりあえず、とアーネストは立ち上がって歩き出した。




