黒闇の残酷雷帝2
「!!!!」
抱きしめられてびっくりしたのか、どこか遠くを見ていた少女の大きな瞳がルキシャを見た。
ルキシャも吸い込まれるように少女を見つめている。
その瞬間、少女の中でバチバチしていた光と振動が……ひゅんっと一気に収まった。
「み、碧の瞳……」
少女が呟いた。
少女の髪と瞳は艶ややかな黒に変わっていた。
少女の方が小柄だ。
少女がルキシャを見上げる形で二人は目を合わせている。
ふとそこで、自分が少女を抱きしめていることにルキシャは気が付いた。
「あっ、あの。ごめん……なさい。断りもなく」
「あっ、いえ。あの、全然、問題、無いです!」
そこへ、先ほどからいる大柄な男、ガトゥールが声を掛けた。
「ルーナ公女殿下、私の妹を助けて下さったのですか?
でも、どうやってこんなことが……
碧の……貴石……か?」
ガトゥールは「ルーナ」になりすましているルキシャの印象的な瞳を見つめた。
妹から、碧の貴石が持つという特性について聞いている。
貴石に似たこの瞳が妹を助けたのだと、そう思えた。
「……あの、お礼がまだでした。
ルーナ公女殿下、私はこの国の、君主キーズ様の護衛を務めるガトゥールと申します。
こちらは、私の妹、カディラです。
この度は本当に、本当にありがとうございました」
いつの間にか先ほどの黒い雲が去り、白い雲に戻っている。
雲間から光もさして一気に明るくなった。
ガトゥールは「ルーナ」に断って皆を呼びに行った。
「あの、やっぱり、……すみません。
えーと、カディラ嬢って呼んでもいい、ですか?」
「いえいえいえ、びっくりさせてしまって、怖い思いをされたのではないですか?
謝罪せねばならないのは私のほうです、お姫様……公女殿下様!
それから、私のことは呼び捨てでお願いします!」
「では、その、……カディラ」
「はい!、公女殿下様」
「ええと、わたくしのことは、うーん。
国では、『ルキシャ』という愛称で呼ばれていて……、
……いや!……やっぱり『ルーナ』と呼んで欲しい」
「かしこまりました!、ルーナ様」
なんだか不思議と、ルキシャはちょっと残念な気持ちになった。
『ルーナ』じゃなくて『ルキシャ』じゃなくて、本当は『ルキウス』と呼んで欲しかった。
いやダメだろう。多方面に問題がある。




