黒闇の残酷雷帝1
( 今、お姫様が………『らいてい』って言わなかった……?? )
( 『らいてい』って、『雷帝』のことでは? )
( 『雷帝』って、『残酷雷帝』って、……… わ た し のことよね?! )
ダメだ、思考がまとまらない。
落ち着かないといけないのに。
動揺に呑まれたら、またやってしまう。
心の騒めきは魔力を引き出し、強い魔力は更にまた動揺を呼ぶのだ。
さっきまでお姫様の危機を心配していた。
でもそのお姫様が『雷帝』と口にした。
お姫様が危険で、『雷帝』が危険で、『雷帝』は私で、私は危険!!!
どうしよう! 私は危険な『雷帝』だ!
どうしよう! 『黒闇の残酷雷帝』だ!
どうしよう!
どうしたらいいの!
体の中に小さなビリビリとした刺激が走り出した。
周囲の空気から雷と同じ力を体に取り込んでいるのだ。
それぐらいならいい。
ああ、でも、もうダメかもしれない。
「大丈夫! 落ち着くんだ! まだ間に合う! 雲はまだ来ていない!」
あにうえの声が遠くで聞こえた。
間に合う? ほんとに? でももう暗いでしょ? もう、ほんとは遅いんでしょ?
広間の後ろの方で体から細かい閃光を放っているのはガトゥールの妹だ。
しかしガトゥールも、もう妹には近付けない。
近付いて落ち着かせたいが妹から発せられるバチバチした力に弾かれてしまうのだ。
大丈夫だと、この場所に引き留めたのはガトゥールなのに。
何としてでも守ってやりたい。しかし。
できるのは妹に声を掛けてやることだけだ。
「落ち着けば『雷帝』になんかならないから!」
窓の外の黒い雲がゴロゴロと音を立てた。
広間のほとんどの者が出て行った。
残っているのはガトゥールとその妹。そしてもう一人。
その場にいたルキシャが声を発した。
「今『雷帝』って? 『雷帝』になるって言った?」
もうルキシャにも見えている。
金色に光る髪が炎の様に広がっている。
金の髪を持つのは金の瞳の少女だ。
体も発光してバチバチと何かが飛び出している。
自分は間違えたのだ。
この少女が『雷帝』だ。間違いない。
『帝』という名称が君主を指すのだと思い込んでしまっていた。
ルキシャの企みは失敗した。
いやしかし、今はそのことはいい。
この少女が問題だ。
この子は……何か苦しんでいる?
ルキシャは、そうしないといけないとなぜだか感じて、その少女に近付いた。
走って行ったと思うが思ったより時間がかかった気もする。
少女の横で声を掛け続ける大柄な男の脇をすり抜け、そして、少女を抱きしめた。




