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謁見1


 ざわざわと皆が勝手なことを言っている時間が続いたが、宮殿の広間に控えるガトゥールへ魔術を使った伝令が届けられた。

 風魔術の使い手が伝令文の文字だけを届けたい相手に飛ばすのだ。

 ガトゥールが伝令を読むと、宙に浮いていた文字がサラっと空気中に溶けてなくなった。

 ガトゥールは護衛だが侍従の役割も果たす。

 君主に報告する。


「キーズ様、到着された大使様が、ひとまずご挨拶されたいとのことです」


 ひとつ前の伝令で、トーカル公国親善大使の一行が山羊での崖登りのために総崩れしたという残念な報告が入っていた。

 しかし公女だけはなんとか挨拶ができるらしい。

 公女の支度も思ったより速かったようだ。


「そうか。それでは、お会いせねばな!」


 サラナームの君主キーズの鼻の下がまた伸びた。

 せっかくの整った顔が台無しだ。


 今回の訪問に先立って、トーカル公国の宰相からサラナームの高官に割と分かりやすく身上調査が入った。

 君主のキーズが「若い女性は好みか」とか「側近として傍に置いているのはどういう人物(おとこ)か」といったものだ。


 サラナームの高官は冗談ぽく返したらしいが、キーズとしては人となりを探られていることに結構こそばゆい感じがしていた。

 第二妃についてはちゃんと断っているのだ。

 それでも、麗しの公女側の親善以上の意図が見え隠れしている気がする。


( 会うだけだ。それだけ。やましい気など………無いぞ? )


 日没までには少し時間がある。

 空にはところどころ白い雲がかかっていて、まだ明るい。

 サラナームは夏と言っても、さほど気温が上がらない。

 今日は風も無く穏やかな過ごしやすい日だ。


 「トーカル公国親善大使のルーナ公女殿下が入室される」と告知があり、皆の視線が扉に集まる。

 扉がゆっくり開く。君主も君主以外も、全員が息を呑んだ。


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