ルキシャは企みます
今回ルキシャは姉のルーナと入れ替わりトーカル公国親善大使としてサラナームに入った。
ルキシャの計略のためには二つの薬が必要だった。
一つ目は、飲むとしばらく高い声が出る薬。飴にしてたくさん持ってきた。
二つ目は、特別な薬だ。
どちらもルキシャ本人が調合した。
平和な祖国トーカル公国はごく近辺を除いて他国の情報には疎い。
ルキシャは無謀にも、最近まで鎖国政策を取っていたサラナームについてほとんど情報が無いままに訪問を敢行した。時間も無かった。
『雷帝』が色好みだというのは有名な話だ。
しかし一方、生贄のようにやってきた女性たちを『残酷にも』次々葬るのは、実は『雷帝』が男色家だからという話もまことしやかに言われている。
そこでルキシャは一計を案じた。
ルキシャは見目が良いが、それだけではない。
ルキシャは公子なのに公国では女性のようにも扱われている。
そんなルキシャだからこその計略だ。
まず、ルキシャは姉に扮して「ルーナ」公女として『雷帝』に取り入る。
パターン公女だ。
婚約を取り付けるのが理想だ。
もし『雷帝』が男を求めているようなら、すかさず本来の公子に戻って、やっぱり『雷帝』の寵を得に行く。
パターン公子だ。
その際、パターン公女で話が進む場合に、男のルキウスでは問題が生じるかもしれない。
男が女のふりをしていたとバレたら、『雷帝』の怒りを買って殺されてしまうことは想像に難くない。
更にパターン公子の場合に、女のはずの「ルーナ」が突然ルキウス公子として『雷帝』の前に現れるのも危険すぎるだろう。
そんなときにルキシャが調合した特別な薬が必要になるのだ。
この行き当たりばったりの計画にルーナと侍女役のメリアが一応納得しているのは、その薬が有るからに他ならない。
護衛騎士のアーネストにも話したがアーネストの賛成は得られなかった。
でもアーネストも親善大使一行に付いて来てくれた。
婚約を取り付けたら『奇跡の動力石』をなんとか頂く。
頂いた後は……、隙を見て死んだことにして逃げる。
は、無理かもしれない。
相手は非情な『残酷雷帝』なのだ。
まさしく死地に赴くつもりでサラナームに来ている。
背に腹は変えられない。
できるかじゃなくて、やるんだ。
『奇跡の動力石』だけはなんとしてでも欲しい。
そのあとのことはルキシャも正直考えないようにしている。
ルキシャが調べ出したあの薬についてルキシャはルーナにも全てを正確には伝えていない。
アレは本当は薬と呼べるものでは無い。
このことはルキシャだけが知っている。




