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遠回りしちゃいました

作者: ぺんぺん草
掲載日:2025/12/06

「ねぇ、和也(かずや)の知り合いにイケメン居ないの?」


 行きつけのバーにて、隣に座る一ノ(いちのせ)美玖(みく)から唐突な質問を受けながら、口に含んだ赤ワインをゴクリと嚥下(えんげ)する。


「なんだ、(やぶ)から棒に?」


「また親からいい人居ないのかって言われたんだよ」


 ワイングラスを片手に持った美玖は、幼稚園の頃から家が隣同士の幼馴染。

 お互いに就職で上京して、家も職場も離れているのだが、こうしてたまに飲みに来る事がある。

 栗色のさらさらとしたセミロングで、ナチュラルメイクながら整った目鼻立ち。

 美人なのに彼氏が()らず、その事を気にする親の愚痴を度々(たびたび)漏らしていた。


「お前なら彼氏くらい簡単に出来そうだけどな」


「簡単にできる彼氏なんて、どれもロクな男じゃなかったよ」


「そうか」


「アンタは? 同棲(どうせい)していたし、そろそろゴールインな感じ?」


「先月別れた」


「は? それ初耳なんですけど」


「浮気された」


「マジか」


「マジだ」


 元カノが間男(まおとこ)と寝ていた光景を思い出し、ブルーな気分になってしまう。


「あたしらさ、もう三十歳(さんじゅう)になるじゃん」


「なるな」


「結婚、できるのかな」


 美玖はワイングラスを見つながら、ため息交じりに将来を心配する。


「今のご時世、結婚にこだわる必要ある?」


「ん~、ぶっちゃけ面倒だけど、親がうるさいしなぁ」


「まあ、それはわかる。別れたって話したら、うちの親もがっかりするだろうな」


 グラスに酒を注ぐマスターの後ろに並ぶ酒瓶(さかびん)を、遠い目で見つめる。

 正直、元カノの事は好きだったから、未だに気持ちとしては(つら)い。


「あんた、今フリーなの?」


「ああ」


「じゃあ……もうあたしが結城(ゆうき)美玖(みく)になるって事で良くね?」


 酒のせいなのか、あるいは発言のせいなのか、ほんのりと頬を赤らめた美玖の突拍子(とっぴょうし)もない発言に、度肝(どぎも)を抜かされる。

 だけど顔には出さないよう、平静を(よそお)う。


()ってんの?」


「そうかもね」


「お前を異性として見た事、無いんだが」


(ひど)っ。あたしは高校くらいまで、割とマジで和也のこと好きだったけどね」


 衝撃のカミングアウトだった。

 言われてみたら、美玖に初めて彼氏が出来たのは、俺に初めて彼女ができた大学以降の話だった。


「……いきなり結婚は早いと思うが、付き合うか?」


 俺も酔いが回って、魔が差したのかもしれない。


「そうね、付き合おっか」


「……ああ」


「あたし達、遠回りしたね」


「……そうだな」


 三十路(みそじ)になるまで遠回りして、幼馴染の美玖と付き合い始める。

 入籍したのは、この日から半年後だった。

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