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第九章 獣の囁き ― 8 力(Strength)
戦車の旅を終え、レオが辿り着いたのは、深い森の中だった。そこにいたのは、一匹の獅子と、それを撫でるひとりの少女。
少女は白いワンピースを身にまとい、どこか無垢な印象を与える。名はリヴィア。その細い指で、獣のたてがみを優しく梳いていた。
「この子、すごく怒ってたの。でも、もう平気」
レオは思わず声を落とす。
「……どうやって?」
「声を荒げず、心で伝えるの。力って、壊すためにあるんじゃない。癒すことだってできるのよ」
獅子の目が穏やかに細められていた。
「君の中にも、きっと獣がいる。でも、それを怖がらなくていい。優しさは、最も強い力になるから」