あとがたり ──この旅のすべてに、ありがとう──
火の王国で、レオは“始めること”を学んだ。
自ら手にした炎は、彼に意志と情熱を与え、最初の一歩を踏み出す勇気をくれた。
水の王国では、“感じること”を知った。
喜びも痛みも、大切な誰かとの絆も、全てが心を揺らし、旅を深めていった。
風の王国では、“考えること”に向き合った。
正しさとはなにか、選ぶとはどういうことか。理性と静けさのなかで、レオは己と対話し続けた。
そして、土の王国。
そこには、静かな日常と積み重ねの尊さがあった。歩き続けること、育てること、受け継ぐこと――“生きる”という言葉の重みが、レオの全身に沁み渡った。
78枚のタロットカード。それはただの占術の道具ではなく、人生をめぐるひとつの地図だった。
大アルカナで描かれた運命の流れに導かれ、小アルカナの王国たちで、人間としての深みを得て――
レオは“フール(愚者)”として旅を始め、今、旅人ではなく“語り手”になった。
この物語をともに歩んでくれたあなたへ。
カードは今も、そっと手のひらで揺れている。
まだ見ぬ誰かの物語を、次の「あなた」が紡いでいくその日まで――
運命の旅路は、終わらない。