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第十四話 大地の王(King of Pentacles)
実りの城の玉座に、ひとりの王がいた。
名はドラン。かつてこの地に裸一貫で現れ、すべてを積み上げた男。
「旅をして、手に入れて、そして最後に残ったのがこれだ」
彼が差し出したのは、ひとつの傷ついたペンタクル。角は欠け、表面もすり減っていた。
「これは……?」
「若い頃に拾ったやつさ。もう価値はない。けどな、これが俺の“原点”だ」
ドランは語る。
豊かさとは持つことじゃない。持ち続け、活かし続けること。
そして何より、“誰かの未来に繋げること”だと。
「君が歩いてきた道は、もう君だけのものじゃない。見ている者がいる。そのことを忘れるな」
レオは静かにうなずき、ボロボロのペンタクルを両手で受け取った。
それは旅の集大成。生きてきた証そのものだった。