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第十三話 抱く者の庭(Queen of Pentacles)
緑あふれる館の庭、温かな光の中で、優雅な女性が小さなペンタクルを膝に抱えていた。
名はエリシア。自然と共に生き、与えることで豊かさを増やす女王だった。
「この地はね、誰かのために育ててこそ実るのよ」
レオは思わず問い返す。
「自分のためじゃ、ダメなんですか?」
エリシアは微笑む。
「自分を満たすのも大切。でも、その実りを分けられる心こそが、“真の豊かさ”を呼ぶの」
ペンタクルは、ただの報酬でも貨幣でもない。
それは心の余白と、他者を思う力の象徴だった。
レオは草花に囲まれた庭を見渡した。
そこには“足りている”という、満ち足りた空気が広がっていた。
与え、支え、育てる者の姿――それは、強さではなく“優しさの完成形”だった。