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第十一話 芽吹きを見つめる者(Page of Pentacles)
小さな畑で、少年がしゃがみ込んでいた。
手には小さなペンタクル。それを太陽に透かし、じっと見つめている。
「この中に、どんな芽があるんだろうな」
名はリム。まだ耕し始めたばかりの農場主見習いだ。
経験も知識も足りない。けれど、目の奥には“これから”への期待が燃えていた。
「失敗するかもしれない。でも、それが楽しみなんだ」
レオは、その言葉に驚いた。
火の国では挑戦が、風の国では選択が、水の国では感情が試された。
でもこの国では、“続けること”そのものが物語になっていた。
芽は、まだ地中にある。けれどリムはもう、それを信じて動き出していた。
未来は見えない。
でも、見るのをやめなければ、いつか必ず手のひらで芽吹く――そう信じられる瞳だった。