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第十話 継がれる屋根の下(Ten of Pentacles)
石造りの家。三世代がひとつ屋根の下で暮らしていた。
祖父は知恵を語り、父は働き、子は遊び、母は笑った。そこには、なんの特別もない、けれどかけがえのない営みがあった。
「積み重ねるってのは、目に見える“形”を超えて、心に残るものなんだよ」
そう語ったのは家の長、バルド。レオの前にペンタクルの刻まれた家系図を見せる。
「これは俺たちの“軌跡”だ。土地に根ざし、名を継ぎ、想いを渡してきた」
レオは静かに頷いた。
誰かが積んだ礎の上に、次が生まれる。それは過去の褒章ではなく、“未来への橋”だ。
バルドは少年の手を取って言う。
「この家がそうだったように、いつか君も“土台”になるんだぞ」
そこに剣も魔法もなかった。だが確かに、“力”があった。