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第八話 積み上げる技(Eight of Pentacles)
木造の工房。若き職人が、黙々と円盤にペンタクルの印を彫っていた。
無言で、集中して、何度も、何度も。
「俺の名前はロシュ。一枚でも雑に作ったら、全部が台無しになる」
レオは彼の背中に、どこか懐かしさを感じていた。
真面目で不器用。でも、諦めない手。
「技術ってのは、センスじゃない。回数だよ。積み上げるしかない」
ロシュの言葉に、レオは深く頷いた。
旅路の中で身につけたものも、同じだった。何度も失敗し、やり直して、それでもまた手を伸ばした。
“積み重ね”は地味で、地道で、誰にも見られないかもしれない。
でも、それが“本物”をつくる唯一の道だった。