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第七話 育つまでの時間(Seven of Pentacles)
畑に立つエルドは、鋤を置いて腕を組んでいた。
種を蒔いてから数日。芽はまだ出ない。けれど、彼はじっと見つめていた。
「焦っても芽は出ねぇ。けど、何もしなきゃ何も変わらねぇ」
レオは隣で座り込み、土の中を見つめる。
「やった分、すぐに結果が見えたら楽なんだけどな……」
エルドは笑う。
「楽じゃないから、出たとき嬉しいんだ。それが“実感”ってやつだ」
空は曇っていた。雨が来るかもしれない。
それでもふたりは立ち去らなかった。土の中にある“可能性”を信じていた。
何も起こらない時間こそが、もっとも何かが動いている時。
レオは、手のひらに残る温もりを感じながら、ただ静かに待った。