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第六話 与える手、受け取る手(Six of Pentacles)
町の広場で、ひとりの男がペンタクルを手に配っていた。
誰にでも分け与えるわけではない。よく見て、慎重に、時には与えず、時には多めに。
「ただ渡すだけじゃ意味がない。必要な人に、必要な分を――それが“分け合い”だ」
名はセバス。かつては商人、今は町の後援者として生きる男だった。
レオは訊く。
「どうして分けられるんだ? 不安にならないのか?」
セバスは笑った。
「昔、もらったからさ。見返りじゃない。ただ、つながってるって思えるんだよ」
その姿に、レオは気づく。
与える手も、受け取る手も、どちらも誇りを持っていた。
ペンタクルは、価値そのものではない。
“信頼の証”として、人の間を行き交っていた。