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第五話 冷たい石の上(Five of Pentacles)
吹雪の夜。レオは、教会の前に蹲る二人の影を見つけた。
ひとりは老人。もうひとりは少女。どちらも着の身着のまま、震えながら扉の前に座っていた。
「入ればいいのに」
レオの言葉に、少女はかすれた声で答えた。
「追い出されたの。汚れた服じゃ、祈りも届かないって……」
その言葉に、胸が締めつけられた。
扉は閉じられている。だが、レオの手にはまだ、少しの温もりがあった。
彼はマントを脱ぎ、二人の肩にかける。
「神様の声が聞こえなくても、人の声なら届くはずだ」
その瞬間、教会のステンドグラスに灯りがともる。
冷たい石の上に、ひとつの光が差した。