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第四話 手放せぬもの(Four of Pentacles)
街の中央、立派な屋敷に住む男がいた。
手には四つのペンタクル。ひとつは頭の上、ひとつは両腕で抱え、もうひとつは足の下に隠していた。
「これがすべてだ。手放せば、俺は俺じゃなくなる」
男の目は強く、だがその奥には怯えが宿っていた。
レオは静かに尋ねた。
「本当にそれを守るために、“世界から自分を閉じて”しまってもいいのか?」
男は答えなかった。ただ、ペンタクルを抱く腕に力がこもった。
「持つことは、悪いことじゃない。でも、握り締めすぎると、手は開かなくなる」
エルドがそう呟いた。
レオは思った。持つことの価値は、それをどう“活かすか”で決まる。
持ち続けるために、手を離すことも必要なのかもしれない。