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プロローグ:大地に根ざすもの
火が意志を灯し、水が感情を流し、風が思考を巡らせた。
そして最後に、レオがたどり着いたのは――大地だった。
広がるのは果てしない草原、実り豊かな畑、静かに動く市場。
どこか懐かしく、そして圧倒的に“現実”に満ちた世界。
ここは、ペンタクルの王国。
夢や理想ではなく、**「今、ここで何を持ち、どう生きるか」**を試される場所。
「この地では、すべてに“価値”がつく。時間も、言葉も、労力も」
案内人として現れたのは、朴訥とした農夫の男――エルド。
火の国で出会った彼は、今やこの地に根を張り、土と共に生きていた。
「夢を見るのもいい。心を動かすのも、考えるのもいい。けど結局、人はこの地に立っているんだ。現実の上にな」
レオは自らの足元を見た。
土があった。その土には、汗と涙が染み込み、小さな芽が育とうとしていた。
旅の終わりにして、新たな始まり。
レオは地を踏みしめ、最後の王国へと歩を進めた。