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第十四話 裁断の王(King of Swords)
風の塔の最上階。そこには王がいた。
名はカイロン。真実と論理の王。剣を掲げずとも、言葉ひとつで戦いを終わらせる男。
「剣とは、刃の形をしていればいいというものではない」
彼はレオを見つめる。その視線には一切の揺らぎがなかった。
「君は、多くを見てきた。だが、“見抜く力”は鍛えたか?」
カイロンは剣を渡すのではなく、ひとつの問いを差し出した。
「すべての選択に、正解はない。ただ、“納得できる自分”を持っているかどうかだ」
レオはゆっくりと頷く。
風にさらされ、削られてきた旅路。その中で残った“核”が、今の自分だった。
カイロンは微笑む。
「ならば、君はもう“斬る者”ではない。“選ぶ者”として歩め」
そして風は止み、新たな静寂が生まれた。