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第九話 眠れぬ夜の果て(Nine of Swords)
夜の宿舎。レオは眠れず、ただ天井を見つめていた。
思考が止まらない。過去の選択、失敗、後悔。静かな夜ほど、それらは鋭く胸を突いた。
「もし、あの時別の道を選んでいたら……」
重くなる呼吸。剣のように鋭い言葉が、心の内側から突き刺さってくる。
ベッドの脇に座るレクスが言った。
「思考は時に剣になる。そして、その刃は自分を傷つける」
レオは顔を覆った。涙が出そうだった。いや、もう出ていたのかもしれない。
「傷ついたっていい。眠れなくたっていい。ただ、夜が明けることを忘れるな」
レクスの言葉に、レオはわずかに目を閉じた。
痛みは消えない。けれど、それが“夜の果て”であることを、心のどこかで知っていた。