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第八話 絡まる視界(Eight of Swords)
霧深き谷底。レオは目隠しをされ、腕を縛られたまま、八本の剣の中心に立っていた。
動けば切られる。何も見えず、声も届かない。そんな恐怖の中で、心だけが騒いでいた。
「ここから抜け出すには、何を捨てればいい?」
答えはどこにもないように思えた。だが、やがて風が頬をなでる。
その感覚が、彼に“目隠しは布一枚にすぎない”ことを思い出させた。
レオは震える手で布をほどいた。視界が開け、剣は思ったよりも遠くに立っていた。
「……縛っていたのは、俺の“思い込み”だった」
不安、恐れ、絶望。すべては“想像”という剣で、自分を囲っていた檻。
風は吹いた。剣は変わらずそこにあったが、レオの歩みは、もう止まらなかった。