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第七話 欺きの刃(Seven of Swords)
闇に紛れて、ひとりの青年が剣を背負い逃げていた。
五本の剣を抱え、後ろを振り返りながら、地を蹴って走る姿は、まるで何かから必死に逃げるようだった。
レオはその姿を見つけて声をかけた。
「それ……盗んだのか?」
青年は肩を震わせながら答える。
「違う……俺の剣を、あいつらが奪ったから……取り返しただけだ!」
だが、彼の目は泳ぎ、言葉には迷いが混じっていた。
「嘘は時に、正しさの仮面をかぶる」レクスの声が、風に混じって届く。
レオは剣をひとつだけ差し出した。
「本当に守りたいものがあるなら、それだけを持って行け」
青年はその一本を受け取り、他を地に置いた。
嘘で塗り固めた盾では、本当の戦いに立てない――風がそう告げていた。