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第五話 奪われた勝利(Five of Swords)
戦場の名残が残る平原。レオは三人の若者が争ったあとを目撃した。
ひとりの少年が、他のふたりの剣を奪って立っていた。勝者のはずなのに、その表情には影が差していた。
「勝ったのに……どうして、こんな気分になるんだろう」
手にした剣の重みは、喜びではなく虚しさだった。
奪ったという事実だけが、心に突き刺さる。
レオは少年にそっと声をかけた。
「本当は、勝ちたかったんじゃなくて、“わかり合いたかった”んじゃないか?」
少年はハッとして剣を落とした。
風が吹き抜けると、その音はまるで「それでも、前に進め」と告げているようだった。
勝利とは何か。奪うことではなく、“共に立つこと”だったと、レオは知る。