55/82
第三話 折れた誓い(Three of Swords)
広間の中央に、三本の剣が突き刺さった石像があった。
それはかつてこの国を治めた王の姿。胸を貫く剣の一本は、彼の忠臣のもの、もう一本は愛する者のもの、そして最後の一本は――自らの手によるものだった。
「……どうして、自分で心を斬ったんだ?」
レオの問いに、レクスはただ静かに言う。
「信じていたからこそ、傷は深くなる。だが、その痛みは裏切りの証ではない。“信じた証”でもある」
レオは剣の柄に手を伸ばした。冷たく、重く、そしてどこか温かい。
引き抜いた瞬間、像の目からひとしずくの涙が流れ落ちた。
痛みは癒えぬまま、記憶となって残る。
だがそれは、斬られた心の奥にある――“真実の愛”だった。