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第二話 二つの静寂(Two of Swords)
崖の上に、目隠しをした女戦士がいた。両手に剣を持ち、交差させたまま動かない。
風は止まり、音ひとつしない世界の中で、彼女は静かに立ち尽くしていた。
レオは声をかける。
「何を待ってるんだ?」
女戦士は答えなかった。だが、彼女の足元に刻まれた円陣が語っていた。
――これは、内なる選択の儀式。
「選ぶとは、どちらかを否定すること。でも、否定だけでは何も得られない」
風が一筋、レオの頬をかすめた。
自分もまた、選ぶことを恐れていたのかもしれない。
女戦士がゆっくりと剣を下ろす。
「答えは静寂の中にある。騒がしい時ほど、自分の心に耳を澄ませ」
レオも目を閉じた。心が沈黙と向き合った時――、風は再び動き出した。