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第一話 決断の一閃(Ace of Swords)
風がうねり、空が裂けた瞬間、丘の頂に剣が突き立った。
誰の手によるものでもなく、まるで空から落ちてきたかのように――それは、鋼の意志そのものだった。
レオが手をかけた瞬間、空気が張り詰めた。
剣は重くはない。だがその柄には、言葉にならぬ“責任”が宿っていた。
「それは“真実を切り拓く剣”。持つ者の迷いを許さない」
レクスの声が風に乗って届く。彼は遠くの岩に腰掛け、目を細めていた。
「その刃は、道を示すと同時に、迷いを裂いてしまう。選ぶということは、何かを斬ることだ」
レオは黙って剣を引き抜いた。風が唸り、空に一本の閃光が走る。
この剣は――自らをも斬る覚悟がある者だけに、真実を教えるのだ。