52/82
プロローグ:風に問う者たち
火と水の王国を越え、レオがたどり着いたのは、終わりなき風の平原だった。
地平線まで続く灰色の大地。言葉も飲み込むほどの沈黙の中、風だけが絶え間なく吹き抜けている。
ここは――ソードの王国。
感情に身を委ねることを許されぬ地。
必要なのは、正確な判断と、痛みを恐れぬ決断。
「ここでは、考える前に動けば斬られる。だが、考えすぎても進めない」
そう語ったのは、風をまとった青年レクス。思考と知性を象徴するこの国で、彼は“導き手”のひとりだった。
剣は真実を暴く。だが時に、嘘よりも鋭く人を傷つける。
だからこそこの王国は、“斬る覚悟”と“守る意志”が試される地だった。
レオは腰のベルトに、小さな剣を差し込んだ。
旅は変わる。心ではなく、思考と向き合う章が、ここから始まる――