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第十四話 王の涙(King of Cups)
水の王宮の最深部。静かな海の玉座に、穏やかな瞳を持つ王がいた。名をセレイオス。
その身には鎧もなく、ただ心の深さを映すような沈黙を纏っていた。
「感情は、波のようなもの。制御するのではなく、共に漂うことを学ばなければならない」
レオは問う。
「強さって、感情を抑えることじゃないのか?」
セレイオスは首を振る。
「抑えるだけでは心は枯れる。受け止め、委ねる強さこそが、真に人を導く力だ」
王は自らの杯をレオに手渡した。中には静かに波打つ水があった。
「お前はよく流れた。傷つきながらも、深く潜ってきた。今こそ、その水を次の地へ運びなさい」
レオは深く礼をし、杯を胸に抱いた。
こうして、水の章は静かに幕を閉じた。