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第十三話 心を映す鏡(Queen of Cups)
月の光に照らされた水宮。その中央の玉座に座すのは、深い青の衣をまとう女王――マリアーナ。
彼女の周囲には揺らぐ水の鏡がいくつも浮かび、人々の心を静かに映し出していた。
「あなたの中に、隠している感情があるわね」
レオは戸惑いながらも頷いた。誰にも言えなかった不安、嫉妬、迷い――
それらを認めることが、怖かった。
「心に向き合うのは、剣よりも怖いこと。でも、あなたはもう、それができる人」
マリアーナはそっと杯を差し出す。
「この水をのぞいてごらんなさい。映るのは、誰かじゃない。“本当のあなた”よ」
レオは杯を覗き込む。そこにいたのは、強がりながらも傷ついてきた自分。
けれどその姿を見たとき、少しだけ――心が軽くなった。