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第五章 秩序の玉座 ― 4 皇帝(The Emperor)
庭園を抜けた先にあったのは、石の城塞だった。高く、堅牢で、どこか冷たさを感じさせる造り。
その中心に、真紅の衣を纏った男が座していた。
「来たか、旅人よ」
その声には威厳があり、揺るぎない意志が宿っていた。名をカイレウス。四つの国を統べる皇帝のひとりだという。
「力とは、ただ奪うものではない。守り、統べ、責任を背負うことだ」
レオは玉座の前にひざまずきながら、問う。
「支配することが、正しいとは限らない。そうじゃないか?」
「そうだ。だが、誰かがこの世界を秩序に保たねば、混沌が支配する」
カイレウスは立ち上がる。背後にある四本の柱の影が長く伸びる。
「お前が“創りたい世界”とは何だ? それを問え。答えは、その問いの先にある」