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第六話 立ち上がる朝(Six of Cups)
朝靄のなか、小川のほとりで子どもたちが遊んでいた。
レオはその様子を静かに眺めていた。あどけない笑顔、小さな手、小石に咲いた花を「おみやげだよ」と渡してくる少女。
その花は、かつてリサが旅の途中で手渡してくれたものと同じ種類だった。
懐かしさとともに、レオの中に小さな温かさが灯る。
「思い出って、こんなふうに今に咲くんだな」
ミレナがそっと言う。
「過去は、心を縛るものじゃない。優しく寄り添ってくれるものにもなれるの」
レオは花を受け取り、胸元にそっとしまった。
もう一度、前に進もう。昨日の悲しみを抱いたまま、それでも歩いていこうと、そう思えた。