41/82
第四話 胸の痛み(Four of Cups)
祝祭が終わった翌朝、レオは湖のほとりにひとり座っていた。
風は優しく、空は晴れている。なのに、心は妙に空っぽだった。
目の前に並ぶ三つの杯。それは昨日、皆と交わした記憶の証。
だが、胸の奥は満たされない感覚に支配されていた。
「どうしてだろう……全部うまくいってるのに、寂しい」
ミレナがいつの間にか隣に座っていた。
「感情は、常にひとつだけじゃないのよ。満たされても、次の波が来る。それが人間の“揺らぎ”」
レオの前に、四つめの杯が差し出された。だが、手は伸びなかった。
それでも彼は、自分の中に確かにある“感情の動き”を、静かに見つめていた。