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第四章 恵みの庭 ― 3 女帝(The Empress)
陽光が差し込む豊かな庭園。実りの果実、溢れる泉、鳥の歌声が響く場所。
そこにいたのは、大地のように穏やかで、母のように優しい女性だった。
「ようこそ、旅人さん。お腹は空いていないかい?」
その声にレオは戸惑いながらも頷く。女性はにこやかに笑い、手ずから果実の盛られた皿を差し出した。
「私はヴェルナ。この地を司る女帝よ」
果実の甘さに目を丸くするレオを見て、ヴェルナは楽しげに笑った。
「自然の恵みは、惜しみなく与えられるもの。愛も、豊かさもね。だけど、受け取るには“心を開く”ことが必要なのよ」
レオは静かに頷いた。腹だけではなく、心が満たされていくのを感じた。