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第十四話 火王の審判(King of Wands)
火山の頂――燃える玉座に、ひとりの王が座していた。
その名はヴァルトレイ。背に赤きマントをなびかせ、燃えるような眼差しでレオを見据えていた。
「ここまで来たか。すべての火を抱えて、まだ進むつもりか?」
レオは頷いた。背中には十本の杖の記憶、手には確かな意志の重み。
その視線に迷いはなかった。
「お前の火は、己のためだけでは終わらなかった。多くを照らし、導いた……だが、それを制御する力はあるか?」
ヴァルトレイの問いは、剣のように鋭かった。
炎を持つことは、破壊にも繋がる。誰かを照らす火が、時に誰かを焼くこともある。
レオは答える。
「照らすだけじゃなく、守るために燃やす。俺は――そのために、この火を使う」
ヴァルトレイは微かに笑い、玉座の背から長く黒い杖を取り出した。
「ならば、この王の火を継げ。お前はもう、“ただの旅人”ではない」
レオはその杖を受け取り、深く、静かに一礼した。
こうして、火の王国は――次なる者に託された。