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第十三話 揺れる女王の灯(Queen of Wands)
砂漠にそびえる城の中庭。色鮮やかな花と炎のランプに囲まれた玉座に、艶やかな女王が座っていた。名はミランダ。彼女は黒猫を膝に乗せ、レオをじっと見つめていた。
「あなたの火……荒々しいけれど、純粋ね」
彼女の声は落ち着いていて、炎のように柔らかくも強い。杖の先に咲く花が、優雅に揺れるたび、空気が温もりを帯びていく。
「情熱だけじゃ、火は保てないの。支える力がなければ、燃え尽きてしまうわ」
レオは、ラズエルの火を思い出す。燃え盛る激情と、止まらぬ衝動。
それに比べ、ミランダの炎は静かで、けれど一層力強かった。
「導く炎もあるんだな」
「ええ。私は、燃やすよりも“灯す”火を選んだの」
彼女の瞳の奥にあったのは、揺るがぬ自信と、深い優しさだった。
その灯火に照らされながら、レオは“燃やすだけではない火”の意味を学んでいく。