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第十一話 目覚めの火種(Page of Wands)
塔を下りた先の高原で、レオはひとりの少年と出会った。
黒いススで頬を汚し、枯れ草を燃やして遊んでいたその少年は、手のひらに小さな火を宿していた。
「君も、火を使えるんだな」
レオが話しかけると、少年は誇らしげに頷いた。
「これね、自分で見つけたんだ! 風の中にいた、ちっちゃな火種!」
少年の名はセルス。まだ未熟で、何度も火を暴走させては焦がしてしまう。けれど、その目はまっすぐだった。
「俺、世界中を旅して、自分だけの火を見つけるんだ!」
レオは、かつての自分を見ているような気がした。
彼の火はもう大きく育っていたが、こうして小さな火種に出会うことで、再び“はじまり”を思い出す。
誰かに灯した火が、新しい旅を生む。
セルスの火は小さく、けれど確かに、世界を照らそうとしていた。