31/82
第九話 揺るがぬ灯火(Nine of Wands)
塔の最上段を目前に、レオの歩みは鈍っていた。
腕には傷、足は泥にまみれ、息も絶え絶え。だが彼の手から杖が離れることはなかった。
「ここまで来て……止まるもんか」
振り返れば、いくつもの炎が過去の試練を照らしていた。そのすべてが、今の彼をつくっている。
「守りたいわけじゃない。ただ、ここを譲りたくないだけだ」
立ちふさがるは、己の弱さ。心の声が囁く――もう休め、と。だがレオは首を振った。
「火が消えるそのときまで、俺は……俺を燃やし続ける!」
彼の炎は、もはや派手に燃え盛るものではなかった。
だが、その揺らがぬ灯火こそが、本当の“強さ”だった。