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第八話 試される意志(Eight of Wands)
山頂へと続く空中の橋。その中ほどに足を踏み入れた瞬間、空が唸りを上げ、無数の火矢が降り注ぎ始めた。
「……試してるのか、俺を」
誰が放ったかはわからない。ただ、この地に生きる火の意思が、旅人の覚悟を測ろうとしているのは明らかだった。
火矢は風に乗り、雷のように橋を裂く。それでもレオは、足を止めなかった。杖を前に掲げ、ただ前へ、ひたすらに走る。
「俺の火は、止まらない」
炎は道を阻むものではなく、意志を映す鏡だった。足元を焼かれようとも、心は進み続ける。
やがて火矢は消え、風がやみ、空は青く晴れ渡った。
橋の向こうに見えたのは、遥か遠くまで続く紅い塔群――
レオの火はもはや、灯火ではなかった。それは、運命を貫く“軌道”そのものとなっていた。