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第二話 ふたつの熱 ― ワンドの2(Two of Wands)
断崖の上で、レオは風に立っていた。
手にはあの杖、そして眼前には、二つの道。
一方は緩やかで安全な山道。もう一方は、炎が吹き上がる不安定な岩場を越える急峻な道。どちらを進むか、それは彼に委ねられていた。
「片方は確実で、片方は可能性だ」
後ろから声がした。赤いマントの旅人――リサ。彼女はいつの間にか、レオの隣に立っていた。
「君の火は、どっちの風に合う?」
レオは少しの沈黙のあと、岩場に目を向ける。そこには何もなかった。ただ、まだ見ぬ世界の気配だけが、熱を帯びて揺れていた。
「燃やすなら、まだ見ぬ景色だ」
そう言って一歩を踏み出したその瞬間、レオの炎は、ただの“火”から“意志”へと変わった。