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第一話 始まりの炎 ― ワンドの1(Ace of Wands)
火山のふもと。地面から吹き上がる蒸気の隙間に、一本の杖が突き刺さっていた。
それはまるで、地の奥から生えてきたかのように自然で、けれど異質な存在感を放っていた。
「……これは?」
レオが手をかけると、杖は熱を帯びて震えた。だが、その熱は不快ではなかった。むしろ内側に眠っていた何かが、呼応して燃え上がるような感覚だった。
「それは“始まり”の火だ」
声の主は、岩の影に佇む男だった。全身を赤銅色の鎧で覆い、その瞳には野火のような光が宿っていた。名をアレンという。
「それを手にした瞬間、お前の意志は“現実に形を持つ”。創り出す覚悟があるか?」
レオはうなずく。
「ある。俺は……自分の意思で、この旅を続けるって決めた」
アレンは満足げに頷き、指を鳴らした。大地が揺れ、杖の根元から炎の道が走る。それは、この王国での試練の始まりを告げるものだった。