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第十五章 静穏の橋 ― 14 節制(Temperance)
雪解けの水が流れる小川。その傍らで、水を二つの杯に注ぎ移す青年がいた。名はエルネス。
「流れとは、調和を保つためにある」
杯から杯へ、水は絶えず移動する。それは止まることなく、しかし決してこぼれない。
「感情も、意志も、力も……すべては行き来し、混ざり合い、ひとつのものになる」
レオは自分の中の“偏り”に気づく。戦いすぎた心、焦りすぎた足。
「ゆっくりと、混ぜることだ」
エルネスの言葉は、まるで流れる水のように穏やかで、強かった。