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第十一章 輪は回る ― 10 運命の輪(The Wheel of Fortune)
渓谷を越えた先に、天空へと続く時計塔があった。塔の中心には、巨大な輪が回っていた。運命の歯車。
塔の守人、名はオルデア。目隠しをした女性だった。
「運命は回る。昇る者もいれば、堕ちる者もいる」
レオは問う。
「じゃあ、僕らはただ流されるしかないのか?」
「否。見るのだ、流れではなく、回転の軸を」
彼女はレオの胸にそっと手を当てる。
「その心が、回転の中心。お前が軸を定める限り、輪はお前の意志で動く」
運命に翻弄されるか、自らの手で回すか――その違いは、意志の在処にあった。